今年、令和元年にもいろいろなニュースがありましたが、経済のニュースとしてはこのニュースを外すわけにはいきません。老後2000万円問題です。
一般的に「老後2000万円レポート」と紹介されますが、正式には令和元年6月3日に金融庁のホームページで発表された『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』というレポートのことです。本記事では今後「レポート」と表現します。
このレポートが注目を集めたのは、マスコミ・メディアと野党が取り上げ、麻生財務大臣がこのレポートについての立場を表明したときです。
もくじ
老後2000万円レポート、麻生太郎財務大臣が受け取らず
老後2000万円の報告書を麻生財務大臣が受理しないと報道されたのは、今年2019年の6月のことです。
当時一ヶ月後の7月に参議院選挙を控えていました。
メディアや野党が、安倍政権のを揺さぶるために「老後2000万円」問題として取り上げつづけたため、政権与党は、選挙への悪影響が出かねないと判断し、麻生財務大臣は火消しの意味も込めて、「政府の政策スタンスとは異なる。」と発言しました。そして金融庁がまとめた報告書を正式に受理しませんでした。
もちろん麻生財務大臣だけではなく、安倍総理大臣も国会の決算委員会において「国民に誤解や不安を広げた」と事実上の間違いを認める発言をしています。
では、本当にこのレポートは間違いだったのでしょうか?
老後2000万円レポートを発表した意味
このレポートは、大学の教授や金融機関、マスコミのの代表、各省庁などが集まって、ワーキンググループを作って12回も会合を開き、議論してまとめ上げた報告書です。
では、このレポートを発表した意味を私なりに勝手に3つにまとめました。
- 国民の老後の資金を自分の責任で準備してほしい。
- 国民に分散投資を理解してもらい、リスクに対しても対応できるようにしてほしい。
- 投資性の金融商品に興味を持ってもらい投資商品販売促進につなげたい。
これらの中で、気になるのは「3.金融商品販売促進につなげたい」でしょう。実際に報告書にも金融商品でもある「iDeCoやNISA」について言及しています。
このレポートを批判している識者の意見の中には、金融商品を売りたいだけのレポートだと揶揄する意見も散見されましたが、レポート全体を見ると決してそういう意図では無いと思いました。
年金と退職金で足りない分は、自分で準備してほしい。国と会社だけに頼らないでほしいという切実な本音が見えてきます。
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老後2000万円レポートへの批判・メディアのミスリード
このレポートが発表されて、野党からの批判をマスコミ・メディアでよく目にしました。
メディアは「公的年金だけで老後の生活は成り立たないのか」と連日報道しました。
さて、このブログを読んでくれている読者の方は、経済や投資に興味のある方々ばかりですから、こんなこと当たり前だと思っているに違いありません。
そうなんです。この問題が大きく報道された理由は、参議院選挙を一ヶ月後に控えた政局だったのです。
そう考えると、今更ながら虚しくなってきます。
そして、厚生年金に加入している世帯を例にしているのに、メディアでは国民年金しか加入していないコメンテーターが、2000万円の額の大小を論じている場面は、見ていて滑稽でした。
ただし、良いこともありました。
それは、改めて老後の資金を考えてほしいというこのレポートが、本来の意図とは別に注目され、ワンフレーズで国民に広く知れ渡ったことです。
老後2000万円の内訳は?一人分?夫婦二人分?
このレポートの10ページ目に根拠のデータが出てきます。それをもとに、2000万円の計算をしています。
まず抑えておくことは、この計算が無職の高齢夫婦二人分(夫65歳、妻60歳)のモデルケースで考えているということです。
一ヶ月の生活費として、不足分を計算
一ヶ月5万円の不足から、老後の不足資金を計算
このレポートでは16ページ下段にザクッと「20年で約1300万円、30年で約2000万円」と表現しています。この2000万円が大きく報道されたものと思われます。
2000万円への疑問
このレポートの一番の疑問は、1億2千万人のすべての国民に対して、老後2000万円が必要だという誤解を与えてしまったことです。
レポートの中では、終始、多種多様なライフスタイルが存在する中で、各々のライフプランも千差万別だと断りながら、一つの例を出して論じてしまっています。
もちろん、2000万以上必要な人も、そこまで必要ではない人もいます。ローンが終わった持ち家の人と、賃貸を続ける人でも大きく変わってきます。そもそも浪費家と倹約家でも全く違うデータが出てしまいます。
そして、30年後40年後を考える話題において、インフレを意識できていないことも大きな疑問です。年間2%のインフレが進めば、30年40年後は貨幣価値は半分近くになります。つまり、4000万円必要になる計算になるのです。
未来の不確実性
ひとつ言えることは、30年後の未来の「お金のこと」を予想しても、わからないということです。
- 経済がどう発展しているかわからない
- インフレ・デフレがどう進むかわからない
- 国の財政がどうなるかわからない
- 高齢者雇用スタイルがどうなるかわからない
- ライフスタイルがどうかわるかわからない
- 家族がどうなっているかわからない
そうなんです。わからないことだらけなんです。
わからないことだらけのなかで、このレポートは果敢に答えを出そうと苦労をした結果であると思います。
なので、批判することは簡単です。
しかしながら、国や企業に頼ること無く、自分の資産を築いていくということは、どんな時代が来ようと大事なことです。
個々人のライフスタイルに合わせること、そしてアドバイザーの充実
つまり、個々人のライフスタイルが多様化し、金融商品・サービスも多様化する中で、アドバイザーの存在はますます重要になってきます。
そして、アドバイザーは、高い志と高い倫理観で顧客に相対する必要が出てきます。
日本の金融政策は、護送船団方式、1億総中流をめざし、世界第2位の経済大国まで上り詰めました。
そんな高度成長期は終わり、バブルを経験し、失われた20年を経験した、日本はすでに、今までと違う個人の自由と責任が問われるそんな時代に突入しているということです。
私たちファイナンシャルプランナーの役割が問われていると思います。